「7割超が法令違反」 外国人技能実習生等を使用する事業場に対する監督指導状況

令和6年外国人技能実習生等を使用する事業場に対する監督指導状況の要点

先日、厚生労働省から令和6年の「外国人技能実習生等を使用する事業場に対する監督指導状況」が公表されました。

この記事では、公開されたリーフレットを参考に要点をお伝えしたいと思います。
この記事の一番下にリンクを貼り付けておりますので、ご興味のある方は、厚生労働省のサイトよりリーフレットをご覧下さい。

7割以上の事業場で法令違反、深刻な「安全」と「賃金」の問題

「技能実習生を使用する事業場に対する監督指導、送検等の状況(令和6年)」によると令和6年に労働基準監督署などが監督指導を行った事業場のうち、実に7割以上で労働基準関係法令の違反が確認されました。
特に、労働者の命に関わる「安全基準」と、生活の基盤である「割増賃金の未払い」に関する問題が深刻であり、制度の適正な運用に大きな課題があることが浮き彫りになりました。

高止まりする法令違反の実態

今回、監督指導が実施されたのは全国で11,355事業場でした。そのうち、何らかの法令違反が認められたのは8,310事業場にものぼります。
違反率は73.2%となり、調査対象となった事業場の4社のうち3社近くで、法律が守られていない状況です。

この高い違反率は今に始まったことではなく、令和2年の70.8%から見ても、改善されることなく高止まりしているのが現状です。

最も多い違反は「安全」と「賃金」に関する項目

違反の内容で最も多かったのは、機械や設備の安全対策に関する「安全基準」の違反で、2,837件(25.0%)でした。
これは労働安全衛生法(第20条~第25条)に関わるもので、労働者の生命や健康を守るためのものです。これらが守られていない状態は、重大な労働災害に直結するだけでなく、企業の安全配慮義務違反が問われる可能性のある、非常にリスクの高い状況と言えます。

次に多かったのが、時間外労働などに対する「割増賃金の支払」に関する違反で、1,774件(15.6%)でした。
これは労働基準法(第37条)に定められた基本的なルールであり、これが守られていないことは、実習生の生活基盤を脅かす問題と言えるでしょう。

順位違反事項件数割合(実施事業場数に対する)
1使用する機械等の安全基準2,837件25.0%
2割増賃金の支払1,774件15.6%
3健康診断結果についての医師等からの意見聴取1,695件14.9%

業種別の傾向

業種別に見ると、違反率が最も高かったのは「建設業」で79.9%に達しました。
建設業では、割増賃金の支払違反が500件(23.3%)、安全基準違反が444件(20.7%)と、いずれも高い水準でした。

次いで「食料品製造業」についても、監督指導のあった1,662事業場のうち1,223事業場(73.6%)で違反が見つかり、その中でも安全基準に関する違反が630件(37.9%)と突出しています。多くの機械を使用する作業環境でありながら、安全対策が追いついていない実態がうかがえます。また労働時間に関する違反も250件(15.0%)となっており、このあたりは食料品製造業の特色でもあると言えます。

こうした状況を裏付けるように、技能実習生本人から労働基準監督署等になされた申告は112件にのぼり、その内容で最も多かったのは、「賃金・割増賃金の不払」で88件を占めていました。

悪質なケースでは送検も

労働基準監督署は、特に重大・悪質な事案については、経営者らを検察庁に送検するという厳しい措置を講じています。
令和6年には16件が送検されており、具体的な事案も掲載されています。

  • 墜落死亡災害(労働安全衛生法違反): 工場の外壁工事現場で、手すりが設置されていない昇降階段を使用させ、技能実習生が約12メートルの高さから墜落死した事案。
  • 違法な長時間労働と賃金不払(労働基準法違反)
    時間外・休日労働に関する労使協定(36協定)を締結・届出せずに時間外労働や休日労働を行わせ、割増賃金を支払っていなかった事案。
    この事案では、調査の際に虚偽のタイムカードや賃金台帳を提出し、違法行為を隠蔽しようとしています。

まとめ

この資料から見えてきたポイントを改めて整理します。

  • 監督指導対象事業場のうち、73.2%で何らかの法令違反が確認されました。
  • 最も多い違反内容は「安全基準」に関するもので、次いで「割増賃金の支払」に関する違反が多くなっています。
  • 重大・悪質な事案については厳正な送検対応が行われており、今後も労働局や労働基準監督署は、外国人技能実習機構と連携し、適正な労働条件と安全衛生の確保に重点的に取り組んでいく方針を示しています。

この投稿が少しでもお役に立てたら幸いです。

【参照元】

厚生労働省 外国人技能実習生又は特定技能外国人を使用する事業場に対して行った 令和6年の監督指導、送検等の状況を公表します