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はじめに
例年4月〜6月は、給与計算の設定変更が立て続けに発生し、実務担当者の皆様にとっては頭を悩ませる忙しい時期です。
今回は、新設される「子ども・子育て支援金」の開始タイミングと、例年行われる各種保険料の改定について、実務でつまずきやすい基本事項を整理して解説します。
なお、今回の解説はあくまでも一般的な控除方法を採用している会社様向けの内容となります。
社会保険料の当月徴収」や「住民税の1ヶ月遅れでの控除」など、独自のサイクルで運用されている場合は処理方法が異なります。
自社が例外的なケースに当てはまるかご不安な場合は、どうぞお気軽に専門家までご相談ください。
また、健康保険料率は加入している医療保険者(協会けんぽ・各健康保険組合等)によって異なるため、本記事では主に「切り替えタイミング」を中心に整理しています。
解説:給与控除切り替えスケジュールの全体像
今年度の実務において最大のポイントとなるのは、やはり新設される「子ども・子育て支援金」です。
令和8年度は、この新制度の導入に加え、例年行われる各種改定が重なるため、4月から6月にかけて控除額の設定変更が連続します。
なお、子ども・子育て支援金は、医療保険の保険料とあわせて徴収される仕組みです。
給与システム上は別項目で管理されることがありますが、制度上は医療保険者を通じて徴収されます。
1. 項目別・切り替えタイミング早見表(月末締め・翌月25日払いの場合)
「どの項目の数字を、何月の給与から書き換えるか」を一目でわかる表にまとめました。
| 控除項目 | 4月25日払(3月分) | 5月25日払(4月分) | 6月25日払(5月分) |
|---|---|---|---|
| 社会保険(健康・介護) | 新料率に更新 | 継続 | 継続 |
| 雇用保険料 | 旧料率を継続 | 新料率に更新 | 継続 |
| 子ども・子育て支援金 | なし | 徴収開始 | 継続 |
| 住民税(年度更新) | 旧税額 | 旧税額 | 新税額に更新 |
※ 上記は「月末締め・翌月25日払い」で、かつ雇用保険についても通常どおり月次給与の締切・賃金確定に基づいて処理する会社を前提とした一般例です。
2. 月別・実務のチェックポイント
- 【4月】健康保険の料率更新
4月25日払の給与(3月労働分)では、健康保険・介護保険が「3月分」となるため、新しい料率で計算します。 - 【5月】雇用保険料率の更新と新制度「子ども・子育て支援金」のスタート
5月25日払の給与では、以下の2つの変更を同時に行います。- 雇用保険料率の更新:雇用保険料率は、令和8年4月1日以後の賃金に新料率を適用します。
実務上は、賃金の支払いが確定するタイミング(通常は締日)を基準に判断するのが一般的です。
そのため、月末締め・翌月25日払いの会社では、通常、5月25日払給与(4月分給与)から新料率に切り替わります。 - 子ども・子育て支援金の開始:支援金は「4月分の社会保険料」から徴収が始まります。
そのため、翌月徴収であるこの5月給与から天引きをスタートさせます。
こども家庭庁も、会社員・公務員について「令和8年4月保険料(5月に給与天引き)より拠出」と案内しています。
- 雇用保険料率の更新:雇用保険料率は、令和8年4月1日以後の賃金に新料率を適用します。
- 【6月】住民税の更新
市区町村から届く通知書に基づき、6月25日払の給与から住民税を新しい税額に書き換えます。
個人住民税の特別徴収は、6月から翌年5月までの12か月で行うのが原則です。
応用編:4月に「賞与」を支給する場合の注意点
通常の毎月給与では、子ども・子育て支援金は「5月給与」から控除を開始するとお伝えしました。
しかし、もし貴社が「4月中に賞与(ボーナス)」を支給する場合は、給与とはルールが異なるため例外となります。
- 社会保険料・支援金(基準:支払った月)
賞与にかかる社会保険料は支給された賞与に対して、その時点で適用される保険料率・支援金率により計算します。
つまり、4月中に支給される賞与からは、ただちに「子ども・子育て支援金」を控除する必要があります。(給与は5月から、賞与は4月から、とタイミングがずれるため要注意です) - 雇用保険料(基準:賞与の締日) 雇用保険料率は、賞与についても、実務上はその賞与に係る賃金の支払いが確定するタイミング(通常は賞与算定の締切等)を基準に判断するのが一般的です。
したがって、4月支給の賞与であっても、その賞与額の確定が3月31日以前であれば旧料率、4月1日以後であれば新料率で処理するのが一般的です。
計算の際には給与と賞与で改定のルールが異なる点にご注意ください。
直前の最終チェックリスト
給与・賞与の計算を回す直前に、以下の項目がクリアできているか確認しましょう。
■ 4月給与(4月25日払)の直前チェック
- [ ] 健康保険・介護保険の料率は「令和8年度」のものに変更したか
■ 4月賞与(4月中に支給する場合)の直前チェック
- [ ] 「子ども・子育て支援金」が天引きされているか
- [ ] 雇用保険の料率は、賞与額が確定するタイミング(通常は賞与算定の締切等)で正しく設定しているか(3/31以前に確定したものは旧料率、4/1以後に確定したものは新料率)
■ 5月給与(5月25日払)の直前チェック
- [ ] 雇用保険の料率は「令和8年度」のものに変更したか
- [ ] 「子ども・子育て支援金」の天引き設定をオン(開始)にしたか
■ 6月給与(6月25日払)の直前チェック
- [ ] 各従業員の住民税額を、市区町村からの新年度通知書通りに入力したか
おわりに
例年4月〜6月は給与計算の設定変更が立て続けに発生しますが、特にこの春は、4月と5月で別々の設定変更が必要になります。
本番の計算を回す前に、今一度テスト計算を行うことをお勧めします。
操作方法や端数処理などで迷われた際は、お気軽にご相談ください。
この投稿が少しでも皆様のお役に立てたら幸いです。




この記事の執筆者
社会保険労務士事務所メインライン
”ここまでやるかと言わせたい!”
【元ホームセンター店長×実務経験7年】
20人未満の中小企業専門社労士です。
手続業務・給与計算・勤怠システム導入支援・退職金制度導入まで、「まるっと」お任せください。
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