第2回:就業規則の届出方法 -変更・規程の新設・全条失効の方法も解説します。

過去の記事はこちらから


◆はじめに

コラムの第1回では就業規則の基本をお話ししました、第2回となる今回は「届出の方法」について解説します。
就業規則が完成したら、次はいよいよ行政への届出です。
今回は、実務上迷いやすいケースも含め、実際に行っている届出の手順を分かりやすく解説します。


◆どこへ提出するのか?「事業場」という考え方

まず、重要なのが「どこへ提出するのか」です。
就業規則は、企業全体で1つ提出すればよいわけではなく、原則として「事業場(拠点)ごと」に、その所在地を管轄する労働基準監督署長へ届け出る必要があります。
例えば、本社が東京、支店が福岡にある場合、それぞれの住所を管轄する労働基準監督へ出すのが基本です。
※ただし、内容が同一であれば本社で一括届出ができる特例もありますが、まずは「働く場所ごとに報告する」という原則を覚えておきましょう。


◆基本的な手続きと必要書類

就業規則の届出や変更の際には以下の書類が必要です。
各書類は「提出用」と、監督署の受領印をもらって会社に保管する「控え用」の計2部、用意しておきましょう。

  • 就業規則届(届出書):「この内容で届け出ます」という表紙のような書類です。
  • 就業規則(本体):作成した規則の全文です。
  • 労働者の意見書:会社が一方的に決めたのではなく、「従業員に内容を見せ、意見を聴きました」という証拠となる書類です。

◆ケース別:届出の具体的な進め方

それでは、実務で発生する4つのケースを解説します。

① 就業規則の「新規作成」

事業場の従業員数が初めて10人以上になった際や、会社設立時に初めて就業規則を作成し、届け出るケースです。

  • 使用する届出書:就業規則(作成)届
  • 必要な添付書類:就業規則本体(全条文が記載されたもの)、意見書(過半数代表者の意見と署名・記名押印があるもの)

② 就業規則の「一部変更」

法改正への対応(例:労働条件明示ルールの変更に伴う規定の追加など)や、各種手当の金額変更など、既存の就業規則の一部だけを書き換えるケースです。 実務上、最も頻繁に行われる手続きです。

  • 使用する届出書:就業規則(変更)届
  • 必要な添付書類:変更後の就業規則(または変更箇所のみ)、新旧対照表(変更前と変更後で「どの条文がどう変わったか」を比較できる表)、意見書(過半数代表者の意見と署名・記名押印があるもの)

③ テレワーク規程など「別規程」を新設する場合

これまでなかった「テレワーク規程」や「マイカー通勤規程」などを新たに作成する場合、「新規作成」の届出になると思われがちですが、すでに就業規則(本則)を届け出ている事業場であれば、「一部変更」の扱いとなります。
別規程も就業規則の一部とみなされるためです。
この場合、大元の就業規則(本則)に「テレワークについては別の規程に定める」という一文(委任条項)を追加する変更を行った上で、以下の書類を提出します。

  • 使用する届出書:就業規則(変更)届
  • 必要な添付書類:新設した別規程の全文(テレワーク規程など)、本則の委任条項を追加した箇所の新旧対照表、意見書(過半数代表者の意見と署名・記名押印があるもの)

④就業規則を「全面改定」する場合

古い就業規則を現在の法令に合わせて一新するなど、既存の条文をすべて廃止して、全く新しい就業規則に入れ替えるケースです。
この場合も「変更」扱いとなります。

  • 使用する届出書:就業規則(変更)届(※新規作成ではなく、あくまで「変更」扱いになります)
  • 必要な添付書類:新しい就業規則本体、意見書

新旧対照表は省略可能です。(念のため事前に管轄労基署への確認を推奨します。)
すべての条文が変わるため、新旧対照表の作成は物理的に困難です。
そのため、届出書の主な変更内容を記載する箇所に「今回は全面改定であり、旧規則を全条失効させるため、新旧対照表を省略する」旨を明記し、「〇〇就業規則 全条失効後 令和〇年〇月〇日施行」と記載した別紙を添えることでスムーズに受理されます。


◆注意点:過半数代表者の正しい選出方法

新規・変更を問わず、届出には事業場ごとの労働者の過半数で組織する労働組合(ない場合は労働者の過半数を代表する者)からの「意見書」が不可欠です。
この過半数代表者の選出方法に不備があると、就業規則の効力が無効となる恐れがあります。
適法な選出要件は以下の通りです。

  1. 管理監督者ではないこと。
  2. 「今回の就業規則作成(変更)の意見聴取をおこなうため」と目的を明確にすること。
  3. 投票、挙手、持ち回り決議などの民主的な手続きで選出すること(社内イントラネットやメールを通じた投票なども有効です)。
    会社からの指名や、親睦会の代表者などの自動選出は違法となります。

また、従業員にとって不利益な変更(手当の削減など)が含まれる場合、過半数代表者から「反対する」旨の意見が記載されることがあります。
労基署の窓口では、反対意見があっても「意見を聴取した事実」があれば届出は受理されます。
よく誤解されるのですが、意見書については、法律上は、あくまで「意見を聴く」ことが義務であり、必ずしも内容に同意(賛成)を得ている必要はありません。
しかし、不利益変更の合理性が認められないまま運用を強行すると、後日、労働審判や未払い賃金請求などの重大な労使紛争に発展するリスクが高くなります。
特に、反対意見が予想される場合や不利益変更を行う場合は、自社だけで判断せず、専門家に事前に相談し、連携して進めていきましょう。


◆労働基準監督署への届出方法

準備した書類一式(届出書・就業規則・意見書・必要に応じ新旧対照表)を、以下のいずれかの方法で管轄の労基署へ提出します。

  • 窓口持参・郵送:
    会社控え用を含め、正副2部を提出します。
    郵送の場合は、返信用封筒(切手貼付)を必ず同封してください。控えに受付印が押されて返却されます。
  • e-Gov電子申請:
    「GビズIDを用いて、オンラインで24時間いつでも届出が可能です。
    上述の通り、届出は原則として事業場ごとに行う必要がありますが、電子申請を利用すれば、複数の事業場を持つ企業が本社から一括して手続きを行う「本社一括届出」が可能となり、大幅な業務効率化に繋がります。
    ただし、一括届出を行う場合でも、意見書は各事業場ごとに聴取し、それぞれ添付する必要がある点にはご注意ください。
    また、電子申請の場合は受付印の代わりに「電子公文書」が発行されるため、それをデータ(または印刷)で会社控えとして保管します。

◆適切な届出が会社を守る土台になります。

第2回では、届出の具体的な手順について解説しました。
第3回では、ズバリ「就業規則は従業員が何人の時に作れば良いのか?」という点について、法律上のルールと、私個人の実務的な意見を交えてお話ししたいと思います。
この投稿が少しでもお役に立てたら幸いです。



この記事の執筆者
社会保険労務士事務所メインライン