【はじめに】
「特定の年齢層が手薄だから、若手を採用したい」「この職種は男性にお願いしたい」といった、募集・採用に関するお悩みを抱えていませんか?企業戦略として特定の人物像を求めることは自然ですが、求人には法律上のルールが存在します。
知らずにいると、意図せず法律に違反してしまう可能性も否定できません。
10月に入り、転職市場も活発となってきました。
この記事では、募集・採用における年齢や性別の制限について、その原則と、認められる例外のケースを解説します。
【まずは結論】
募集・採用において、年齢や性別を制限することは、法律で原則として禁止されています。
「男性限定」や「30歳未満の女性」といった条件を設けることはできません。
ただし、事業の特性やキャリア形成を目的とする場合など、一定の条件下では例外的に認められるケースがあります。
【解説】
1. なぜ年齢や性別の制限は禁止されているのか
個人の能力や適性とは関係ない事柄で応募の機会を奪うことのないよう、年齢制限については「労働施策総合推進法」、性別による差別は「男女雇用機会均等法」で、それぞれ均等な機会を与えることが定められています。
特に、年齢制限については、すべての人が年齢にかかわりなく、その能力と意欲に応じて活躍できる社会の実現を目指す観点から、募集・採用において年齢不問とすることが義務付けられています(労働施策総合推進法第9条)。
2. 年齢制限が例外的に認められるケース
企業の特定のニーズに対応するため、法律では以下の例外が認められています。
- 長期勤続によるキャリア形成のため若年者等を募集する場合
(例)35歳未満の方を募集(高卒以上・職務経験不問)
(※注)あくまで若年者等のキャリア形成を目的とするため、雇用期間の定めのない労働契約(無期雇用)が前提となります。 - 技能・ノウハウの継承のため特定の年齢層を募集する場合
(例)電気通信技術者として30〜39歳の人を募集(技術者の年齢構成が20代9人、30代2人、40代7人の場合)
(※注)特定の職種で、特定の年齢層の労働者数が上下の年齢層と比較して半分以下の場合に限られるなど、厳格な要件があります。 - 定年年齢を上限として募集・採用する場合
(例)当社の定年が60歳のため、60歳未満の方を募集 - 60歳以上の高年齢者または特定の年齢層の雇用を促進する国の施策の対象となる場合に限定して募集する場合
(例1)60歳以上の人を募集
(例2)国の助成金(人材開発支援助成金)の対象者として15歳以上45歳未満の人を募集 - 芸術・芸能の分野で表現の真実性が求められる場合
(例)演劇の役作りのため○○歳以下の人を募集
3. 性別限定での募集が認められるケース
こちらも男女雇用機会均等法で原則禁止(男女雇用機会均等法第5条)ですが、以下のような場合には例外が認められています。
- これまでの慣行や固定的な役割分担意識などが原因で男女の間に生じている格差を解消するための措置(ポジティブ・アクション)として募集する場合(例)女性労働者の割合が著しく低い職種(男女比が8:2等)で、女性のみを募集する
- 芸術・芸能分野で表現の真実性が必要な場合
(例)映画の製作にあたり女性役のため、女性を募集する - 防犯上の要請から男性に従事させる必要がある場合
(例)現金輸送車の警備員など、防犯上の理由から男性を募集する - 宗教上、風紀上、スポーツの性質上の理由がある場合
(例)女性更衣室の受付係として、女性を募集する
【まとめ】
今回の内容を整理すると以下のようになります。
- 募集・採用において、年齢や性別を理由に応募者を制限することは、法律で原則禁止されています。
- ただし、「長期キャリア形成」や「技能承継」など、合理的な理由がある特定のケースでは、例外的に年齢制限が認められます。
- 性別による制限も、格差解消を目的とする場合や、職務の性質上やむを得ない場合に限り、例外的に認められます。
- 例外規定を適用する際は、法律で定められた要件を満たしているか、事前の確認が不可欠です。
【参照元】
- 厚生労働省「その募集・採用 年齢にこだわっていませんか?」
- 厚生労働省「男女均等な採用選考ルール」
- 厚生労働省「労働者の募集及び採用における年齢制限禁止の義務化に係るQ&A」
この投稿が少しでもお役に立てたら幸いです。